角膜移植について
角膜移植とは?
 角膜は眼球表面にある直径約11mm,厚み約0.5mmの透明な膜であり,いわゆる黒目に相当する部分です。角膜自体は透明であり,目が黒いのはその奥の虹彩が透けて見えているためです。角膜は,1)眼球の外壁の一部として眼球の形態を保持する2)硬い膜状組織として眼球内を外からの侵襲から保護する3)眼球内に光を導くためのレンズとして光学的に働く,などの役割を果たしています。角膜移植は,角膜に病気があって,このために視力が低下している状態を治療するために行われます。角膜移植は,医学の世界で最も古くから行われ,最も普及している移植手術であり,日本では年間約3000例の角膜移植手術が行われています。
角膜移植の対象
 角膜移植の対象となる代表的な疾患には,角膜白斑,角膜変性症,円錐角膜,水疱性角膜症などがあります。
 角膜白斑とは感染性角膜炎や外傷などにより角膜に瘢痕が残った状態であり,本来透明であった角膜が傷跡によって混濁しています。感染性角膜炎は細菌,真菌(かび),アメーバ,ウイルスなど様々な病原体が原因となって生じます。図はヘルペスウイルスによる角膜炎を繰り返した後に角膜が混濁した状態です。

 角膜変性症は遺伝性の疾患の1つであり,角膜に異常な物質が蓄積することになって生じます。顆粒状角膜変性症,斑状角膜変性症,格子状角膜変性症などがあり,両眼性であることが特徴の1つである(写真は格子状角膜変性症)。疾患によっては角膜移植後も再発が生じ,繰り返して角膜移植が必要となる場合があります。

 円錐角膜は10代後半から20代に発症し,角膜が不整に突出する疾患です。本来,角膜はほぼ球面をなしたレンズですが,これが突出して歪んでしまいレンズとしての役割を果たせなくなってしまいます。中等度の症例まではコンタクトレンズで視力を矯正することができますが,重症例では徐々に角膜の混濁を伴うようになり,角膜移植が必要となってきます。
 水疱性角膜症は角膜が浮腫状に混濁する疾患で,角膜内皮細胞の機能不全による病気です。原因として日本では,眼手術(白内障手術や緑内障レーザー手術)に続発したものが多いようです(写真は眼内レンズ術後の水疱性角膜症)。
角膜移植の種類
角膜移植は技術的にいくつかの種類があり,目的別にもいくつかに分けることができます。手術の手技としては全層角膜移植と表層角膜移植が代表的であり,最近は輪部移植や角膜上皮形成術,角膜内皮移植などの新しい手技も行われるようになってきています。
全層角膜移植は角膜の中央部分約7-8mmをくり抜くようにして交換する手術であり,角膜移植の基本となる手術です。写真は水疱性角膜症の症例ですが,手術の後には角膜中央部が透明な移植角膜で置換されていることがわかると思います。ほとんどの場合,視力回復を目的として行われます。

 表層角膜移植は,角膜の後面の一部は残した状態で,角膜移植片をその上にのせて縫合する手術であり,光学的角膜移植,治療的角膜移植,整容的角膜移植など様々な用途で行われます。
 光学的目的では深部表層角膜移植やALTKが行われます。深部表層角膜移植は角膜内皮とその直上のデスメ膜だけを残す(角膜全体の10%だけを残して,大部分を切除する)方法です。深部表層角膜移植は全層角膜移植と同等の視力が得られ,しかも拒絶反応が生じないなどのメリットがあり,注目されている方法です。写真は角膜ヘルペスで角膜中央が薄くなり,混濁も残ってしまった症例で,術後には角膜の形はほぼ正常と変わらなくなり,透明性も回復しています。また混濁の浅い症例ではケラトームという精密なかんなのような器具で角膜を切除するALTKという新しい手術方法も採用しています。手術時間が短く,術後の乱視も少ないので,早期に視力回復が図れるというメリットがあります。

治療的角膜移植とは,角膜潰瘍や角膜穿孔などそのままでは失明の危険に曝された状態の眼に行う手術です。病原菌に侵された角膜の病巣部分を切除して,移植角膜をその上に乗せることで補強を行い,眼球の形態を保つための手術です。整容的角膜移植とは,角膜の混濁や腫瘍などにより見かけに問題がある場合に,病巣を切除して,黒目として整えるための手術です。
このようにひとくちに角膜移植と言っても様々な目的と方法があり,症例に応じた使い分けが重要です。当院では,ほとんどの角膜移植手術に対応することができ,1人1人の状態に応じて使い分けや組み合わせを行い,最適な結果が得られるように努力しています。