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臨床遺伝センター

概要

 近年、様々な疾患で遺伝要因が関係することや、遺伝的体質によって適する治療が異なる場合もあるなど、医療における遺伝の重要性が社会的に広く認知されてきました。このため、遺伝について適切かつ効果的に取り組むために平成26年8月に臨床遺伝センターが開設され、平成28年には108名の新患受診がありました。

 遺伝というと特別なこと、稀なことという印象を持たれるかもしれませんが、実際には全ての方々の健康に関係しています。欧米では既に遺伝医療が広く普及している国があり、健康への不安を減らし、的確な遺伝カウンセリングや効果の高い治療に用いられています。当臨床遺伝センターでは、安全、安心を第一に、患者の皆様が希望を持って前向きに進まれることを何よりも大切に取り組んでまいります。

 

診療の特徴

チーム医療  臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーが一丸となり、疾患に関する正確な情報を提供し、患者さんやご家族の不安を和らげ、遺伝子検査を含む様々な選択や意思決定を支援します。また各疾患の診療を担当する専門科の医師とも連携し、その後の診療への橋渡しを適切かつ親身に行います。

 

遺伝子検査・診断 十分なカウンセリングを行った上で、ご希望と必要性がある場合は遺伝子検査を行う場合があります。遺伝子検査は、保険適用検査、自費検査、研究的検査から適切に選択して実施致します。ほとんどの遺伝子検査は少量(こども5cc – おとな20cc)の採血を1回だけ行い、その血液で疾患に関係する遺伝子を調べます。

 

プライバシー保護 遺伝診療では、一人一人の患者さんの状況に対する十分な配慮とプライバシーの最大限の尊重が特に必要とされます。このため、当臨床遺伝センターでは診療とそれに付随する様々なことに特別な配慮を定めて対応します。個人情報の保護のために臨床遺伝センターの診療情報は一般の診療録(カルテ)とは別に記載し、特別に厳重な管理を致します。

 

遺伝カウンセリング(遺伝相談)  遺伝性疾患の患者さんやその親族、あるいは遺伝について不安や悩みを抱えている方々を対象に、遺伝に関する情報を提供し、また遺伝子診断を受けるべきか否か、どのような治療を選ぶかなどについて、ご自身できめていただくためのお手伝いをいたします。個人の意志を尊重し、十分な理解が得られるように、時間をかけて遺伝カウンセリングを行います。遺伝カウンセリングには、遺伝子検査前のカウンセリング(考えられる疾患の説明、遺伝子検査の目的と説明、遺伝に関する説明、血縁者への影響の問題への対応、検査結果が出た後のことについて)と、もし遺伝子検査を実施した場合には遺伝子検査後のカウンセリング(遺伝子検査結果の報告と説明、遺伝に関する説明、診断結果に基づいた疾患に関する医学的情報提供、治療・療育・社会的支援についての情報提供)を行います。

 

対象疾患

 家族性腫瘍、小児遺伝性疾患、難聴を対象として開始致しました。今後、他の疾患や遺伝的体質に応じた薬剤の選択などへの取り組みも順次進める予定です。

 

疾患に関する情報提供

家族性腫瘍/遺伝性腫瘍

 がんは普通、非常に多くの要因(喫煙や食事などの生活習慣、体質的な要因、環境要因など)が複雑にからみあってできると考えられています。ただし、ある遺伝子に変化が起こるとある種のがんを引き起こすといった、遺伝と特定の癌との強い関連がわかってきました。このようながんを「家族性腫瘍/遺伝性腫瘍」と呼びます。「家族性腫瘍/遺伝性腫瘍」に関する遺伝カウンセリングでは、遺伝の専門家である臨床遺伝専門医により遺伝性のがんの詳しいリスク評価を行い、適宜遺伝子検査を行うことも可能です。がんの発症リスクを知ることにより、がんの予防、早期発見、治療選択、家系全体の健康管理に役立てて頂けることを目指しています。

 

 具体的にはご家族の一方の家系の中に(母方または父方)、

 ・若くして(目安として50歳未満)がんに罹った人がいる

 ・がんにかかった人が特に多い(目安として2-3人以上)

 ・何度もがんに罹った人、様々な部位にがんができた人がいる

 

 このような場合には、ご自身にがんに罹りやすい体質が受け継がれている可能性があり、ご心配であれば一度遺伝カウンセリングの受診をご検討いただけます。

 

1)家族性腫瘍/遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリングの流れ

 実際の遺伝カウンセリングでは、「自分はがん家系ではないか」という不安をお持ちの方に、まずご親族の詳細な家族歴をお聞きし、家系図を作成します。この情報から、家族性腫瘍の可能性を評価します。家族性腫瘍であることが強く疑われる場合、その病気について詳しい情報をご提供します。また診断を助けるために、遺伝子検査をご提案することもありますが、遺伝子検査を強制することはございません。遺伝子検査を受けられた場合には、その結果の意味についても詳しくご説明します。

 

 次に、ご本人の今後について、新たにがんが生じるリスクや他の臓器にがんが生じるリスクを評価し、必要な検査や予防法について情報を提供し、適切な検査・治療計画をご提案します。さらにご親族の方々のリスクについても評価し、検査や治療をご提案することもあります。

 

 さらに加えて、家族関係、結婚、出産、就職、保険加入などについても難しい悩みが出てくることも少なくありません。これらの問題をきちんと整理・理解し、ご自身で最善と考えられる決定を下すために、遺伝カウンセリングの専門家に相談することができます。お話ししづらい内容もあるかと思いますが、プライバシーに配慮し、個人情報については厳密に管理するよう努めております。

2)対象となるがんの種類

 実際の遺伝カウンセリングを通じて、個々人に応じて想定される家族性腫瘍は異なります。そのためにはご家系内の病気の詳細が重要になります。

 

 ですので、ご両親、ご祖父母の代のご兄弟やお子様までの詳細な情報があると、より正確な評価が可能となります。健康な方やがん以外のご病気の方の情報につきましても、外来を受診される前に、ぜひご確認ください。頻度の高いご相談内容は、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)、Lynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)などです。

 

 ご家族の中に、若年発症の乳癌や両側乳癌、男性乳癌、卵巣癌などに罹られた方がおられましたら、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の可能性を疑い、リスク評価を行います。また、ご家族の中に若年発症の大腸癌や子宮体癌、卵巣癌、胃癌などに罹られた方が複数おられましたら、Lynch症候群の可能性を疑い、まずはスクリーニング検査をご相談することができます 。

3)遺伝カウンセリング後のフォローアップ

 遺伝子検査を受けられて病的変異が判った場合、その後のがんの発症に不安を感じる方は多いです。ご本人の今後について、計画的ながん検診など必要な検査や予防的治療について情報を提供し、適切な検査・治療計画をご提案します。また自分の体質についてご不安な場合には、心理的な支援を行うこともあります。ご家族を含めて、当院において長期的なフォローアップを受けて頂くことが可能です。

 

 遺伝子検査のメリット・デメリットはありますが、ご自身にとって、がんの発症リスクを正しく知り、ご自身とご家族のがんの早期発見などの健康管理に役立てることができることが、遺伝カウンセリングの最大のメリットだと考えられます。当院では日本人類遺伝学会が認定している臨床遺伝専門医が担当し、十分な時間をかけてご理解頂けるようお話しすることにしております。

 

 

小児遺伝性疾患 何らかの先天異常/先天奇形をもつお子さんは2〜3%の割合で出生することが知られており、決して稀なことではありません。その内訳は図の通りで、先天異常の原因を特定することは必ずしも容易ではありませんが、特定の先天異常では症状の組み合わせから何らかの症候群が想起できれば、一元的に原因を説明できる可能性があります。加えて、近年のめざましい遺伝子解析技術の進歩により、これまで原因不明であった先天異常症候群の患者さまが確定診断に至ることも増えています。当センターでは染色体異常、多発奇形症候群、原因不明の多発奇形/精神発達遅滞、骨系統疾患など、全ての遺伝性疾患を取り扱います。

 

(例)ダウン症候群(21トリソミー)、13トリソミー、18トリソミー、4pモノソミー、5pモノソミー、トリプルX、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、22q11.2欠失症候群、スミス・マジェニス症候群、ウィリアムス症候群、ソトス症候群、頭蓋骨早期癒合症、マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群、CHARGE症候群、アラジール症候群、ヌーナン症候群、コステロ症候群、カブキ症候群、コケイン症候群、VACTER連合、コルネリア・デ・ランゲ症候群、コフィン・ロゥリー症候群、ワーデンブルグ病、ゴールデンハー症候群、ピエール・ロビンシーケンス、ルビンシュタイン・テイビ症候群、トリチャーコリンズ症候群、ホルト・オラム症候群、アントレ−・ビクスラー症候群、モワット・ウイルソン症候群、シュプリンツェン・ゴールドバーグ症候群、スティックラー症候群、軟骨無形成症、ゴーリン症候群、外胚葉異形成症、色素失調症、神経線維腫症、ラッセル・シルバー症候群、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群、レット症候群、QT延長症候群、多発性嚢胞腎、ネフロン癆、色覚異常、網膜芽細胞腫、口唇口蓋裂、指趾奇形、サラセミア、血友病など

 

 

 当臨床遺伝センターでは、全身の診察や一般的な検査に加え、必要に応じて充分な遺伝カウンセリングのもとで遺伝学的検査を実施し診断の確定を目指すと共に、各専門診療科と緊密に連携をとりながら疾患特性や個々の症状に配慮した健康管理を行います。 

 また遺伝性疾患は、患者さまご本人のみならず、親子、兄弟、その他血縁者にも影響を及ぼす可能性があります。このような遺伝性疾患に関する悩みや疑問に応えるため、家系内における遺伝的リスクの評価、次子再発率の推定など、エビデンスに基づいた遺伝医療情報を提供し心理社会的な支援を行います。例えば次のようなケースを想定しています。

 ・上の子供が生まれつきの病気を持っているが、次の出産は大丈夫だろうか。

 ・自分や家族の持っている病気は子供に遺伝しないのだろうか。

 ・遺伝病の疑いがあるといわれたが、よく理解できない。

 ・遺伝子検査をすすめられたが、受けるべきだろうか。

 

難聴  平成13年から現在までに当院耳鼻咽喉科および関連病院において先天性難聴、小児難聴、成人難聴、遺伝性難聴に対する遺伝子検査、診断、カウンセリングを約2100家系、4400人で行ってきました。数年前の検査方法や診療内容を現在と比べると著しく進歩して、原因が判明する割合がとても高まっています。また、遺伝子の情報も急速に充実しているため、原因に応じてより適切な治療、リハビリテーション、遺伝カウンセリングを提供できるようになっています。

 両耳の先天性難聴は約1000人に1人、4歳の小児では約400人に1人で、その約半数では遺伝子に原因があります。成人後に発症する原因不明の難聴もその多くで遺伝子が関係しています。また、遺伝性難聴では、家族や親類に難聴の方がいない場合が多く、これは劣性遺伝(両親の遺伝子の偶然の組み合わせで子に難聴が生じる)が多い(約80%)ためです。このため、家族歴がない難聴でも原因不明であれば遺伝子に原因がある可能性が高いのです。(下図参照)

 

 

 遺伝性難聴は、難聴以外の症状がないタイプと難聴以外の症状を伴うタイプ(視覚障害、甲状腺腫、糖尿病、奇形など)の大きく2種類に分けられます。難聴以外の症状を伴うタイプでは、将来に発症する可能性がある疾患に対して、予防、早期診断と治療を準備できる場合があります。このような症候群としては、アルポート症候群、鰓耳腎症候群(BOR症候群)、チャージ症候群(CHARGE症候群)、ジャーベル・ランゲ・ニールセン症候群、ヌーナン症候群、ノリー症候群、ペンドレッド症候群、スティックラー症候群、アッシャー症候群、ワールデンブルグ症候群、ペロー症候群、ミトコンドリア病などが代表的です。

 まず、一般耳鼻咽喉科で十分な問診、診察の上で、遺伝子必要があり、かつ希望がある場合には遺伝子検査・遺伝子診断を行います。遺伝子検査には先天性の発症が考えられる難聴に対しては保険検査と研究検査が、生後に発症したと考えられる難聴に対しては研究検査が実施可能です。難聴以外の症状も伴う症候群性難聴に対しても遺伝子検査を行うことができます。難聴の原因にはきわめて多数の遺伝子の変化があるため、当院では次世代シークエンサーを用いた多数の遺伝子網羅的な解析を行っています。遺伝子検査の前後には遺伝カウンセリングを十分に行い、遺伝子検査の希望があり、役立つと考えられる患者様に対して、適切な検査法を選んで実施し、検査結果はその後の診療に活用します。当院耳鼻咽喉科では、幼小児から成人まで、補聴器や人工内耳による治療体制も充実しています。 

 

スタッフ紹介(担当)

 

松永 達雄

センター長、昭和63年

日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医

補聴器適合判定医師、日本めまい平衡医学会、めまい相談医

難聴、遺伝一般、耳鼻科一般

山澤 一樹

センター医員、平成11年

日本小児科学会専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医・指導医

遺伝一般、小児科一般

植木 有紗

センター医員、平成16年

日本産科婦人科学会専門医、日本がん治療認定医機構認定医、

日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、家族性腫瘍カウンセラー

産婦人科一般、家族性腫瘍

松井 哲

併任、乳腺科医長、昭和61年

日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会専門医

日本消化器外科学会認定医検診マンモグラフィー読影認定(A)

日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本がん治療認定医機構認定医

乳腺・内分泌外科、乳癌化学療法、一般外科、消化器外科

込山 修

併任、小児科医長、医療総合支援部長、昭和55年

日本小児科学会認定医、日本体育協会公認スポーツドクター

小児循環器、小児スポーツ医学、小児科一般

井上 沙聡

遺伝カウンセラー

GMRC(Genome Medical Research Coordinator)

遺伝カウンセリング一般

安齋 純子

遺伝カウンセラー(非常勤)

日本遺伝カウンセリング学会・日本人類遺伝学会認定遺伝カウンセラー

遺伝カウンセリング一般

 

受診を希望される方へ

 診療は予約制です。初診の方は医事外来係(03-3411-0348)(直通)までご連絡ください。当院で診療を受けている医師を通じてのご連絡、かかりつけ医師からのご紹介でもご受診頂けます。

 遺伝カウンセリングの費用は初診9180円(税込)、再診4860円(税込)です。遺伝子検査の費用は項目により異なります。一部の疾患には健康保険が適応されます。詳細につきましては予約時にご案内致します。

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