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第14回 平成19年6月21日(木) 一般来場者数245名

第14回 市民公開講座 講演概要

めまいと転倒予防

 

はじめに

"めまい"の多くは耳の奥の内耳の半分を占める平衡感覚器の病気で生じます。2500年前の医師ヒポクラテスの活躍したギリシア時代以来、感覚は"五感"といって5つの感覚があると考えられています。すなわち、"視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚"の5つです。"平衡感覚"はその中に入っていないのはなぜでしょう。平衡感覚が耳の中にあることが発見されたのは19世紀半ば、すなわち江戸時代も終わる頃にパリ大学のフルーラン教授がハトの内耳を破壊する実験をしたところ、ハトの眼が左右に動き始め(眼振)、首は曲がり、体を支えきれずにバランスを失ったとのことです。しかし首や足に麻痺は生じません。これは人間のめまいの患者さんと似ています。"めまい"の発作が生じると眼振が生じるために、周囲が回って見え、気分 が悪くなり吐き気が強くなってバランスを失って倒れ、難聴や耳鳴りが生じ苦しむのですが、そのうち何日かすると症状が通り過ぎて元のように元気になります。めまいの発作中は意識がはっきりしており、手足の麻痺や知感の脱失も起きません。このようなめまい発作の原因は大昔から"めまい卒中"と言い、脳卒中の一つと見なされて来ました。原因は、耳の奥の内耳の 三半規管の病気にあり、脳の病気ではないと初めて報告したのがフランスのメニエール先生で19世紀後半のことです。めまい発作で急死した白血病の少女の解剖で出血が内耳にあったことから見出された画期的な発見でした。しかしメニエール先生は発表した翌年亡くなり、自分の名前がメニエール病として医学の歴史に残ったことは知りません。

めまいの病気には何種類かあり、一番多いのは良性発作性頭位めまい症で、首の位置の変化でめまいが生じますが耳鳴りや難聴はありません。耳石器の障害で、耳石がはがれ浮遊するために生じると考えられています。その次に多いのがメニエール病で、内耳を解剖すると、内リンパ水腫が生じています。これは、内耳の中に水が過剰にたまる状態のことです。めまいの病気には塩分をとりすぎないようにと指導するのはこのためです。この内リンパ水腫が発見されたのはメニエール先生が亡くなってから70年も後のことで、日本と英国の両方で独立して報告され、現在では動物実験で再現できるようになっています。

転倒の予防のためには、めまいの病気の原理を逆に利用することをすすめます。加齢が進むと、体を支える脳神経のしくみ、筋肉、骨や関節などが全て少しずつ年をとり弱くなります。しかし、内耳の中の平衡覚の装置は余り年をとりません。体の姿勢の位置を直ちに感じ、立直り反射によりバランスをとるように脳神経が命令します。この仕組みを毎日鍛練することが転倒の予防につながるので、ラジオ体操やジョギングなどがすすめられます。

*参考文献 加我 君孝 "めまいの構造第2版、金原出版(東京)、2006"

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