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第2回 平成14年12月12日(木) 一般来場者数 75名

第2回 市民公開講座 講演概要

年をとるとおしっこが出にくくなるのは何故? 〜前立腺のおはなし〜

前立腺肥大症、前立腺癌の診断と治療

 

はじめに

 前立腺は膀胱の出口で尿道を囲むように存在するもので、精液を作るなど生殖機能にかかわる臓器です。若い頃はクルミの実大ですが、性機能の低下とともに萎縮して小さくなります。しかし、中には50歳を過ぎた頃から肥大してくるものがあり、前立腺肥大症となります。前立腺には構造上、尿道周囲の移行域(内線)や直腸に面した周辺域(外線)がありますが、前立腺肥大症は移行域の組織が結節状に肥大し、それが尿道を圧迫するために生じる病態です。前立腺癌の多くは周辺域に発生します。そのため直腸からの指診で硬く触れることがあります。

?.前立腺肥大症
症状: 尿の勢いが弱い、排尿の開始に時間がかかる、排尿の回数が多く、特に夜間何度もトイレに起きる、残尿感などが主な症状です。
診断: 自覚症状を問う質問表(IPSS:国際前立腺症状スコア)、経直腸エコーによる前立腺の大きさの測定、器械による尿流速度の測定、超音波による残尿量の測定などの検査により、前立腺肥大症の有無や程度を診断します。
治療: 程度の軽いものは薬の内服で症状が軽快します。用いられる薬剤としては交感神経遮断薬(アルファブロッカー)が最も一般的で、この薬には膀胱出口付近の尿道の圧迫を弛める作用があり、前立腺は縮小しませんが排尿の抵抗が減り、楽に排尿できるようになります。この他にも植物エキスを成分とした薬剤が有効なこともあります。中程度以上のものは前立腺を縮小させる手術が必要になります。手術の多くは尿道から内視鏡を用いて行われる経尿道的前立腺切除術(TUR−P)です。これは電気を用いて肥大した前立腺を切除しますが、最近はレーザーを用いる方法も一部で行われています。その他にも温熱療法と呼ばれる手法があり、これは尿道や直腸からマイクロ波や超音波を用いて前立腺内部を高温にし、組織を壊死させるものです。
?.前立腺癌
症状: 基本的には無症状です。前立腺肥大症に合併することがあり、その場合には前立腺肥大症の症状があります。
診断: 直腸からの指診、経直腸エコー、血液のPSA値の測定が主な検査方法です。これらの検査で異常があれば、前立腺の組織の一部を針で採取して、顕微鏡で癌組織の有無を調べる前立腺針生検を行い、確定診断を行います。癌が確認されると治療方法を決定するための病期診断を行います。前立腺癌は骨やリンパ節に転移を起こしやすいので、骨シンチ、ロスキャン、MRIなどで転移や周囲への浸潤がないかを検索し、病期の診断を行います。前立腺内に病巣がとどまっている段階を病期B、前立腺被膜外に漫潤のあるものを病期C、転移がすでにあるものを病期Dといいます。
治療: 前立腺癌の治療は、手術療法、放射線療法、ホルモン療法の三つに分類されます。手術療法は下腹部を切開するか、もしくは腹腔鏡で前立腺と精嚢を摘出するもので、病巣が前立腺内に限局していれば根治が最も期待できる治療法です。放射線療法は前立腺部に放射線を照射して癌を死滅させる治療法ですが、これには一般に行われている外滑射と、放射線源を前立腺内に挿入して照射を行う小線源療法があります。根治が期待でき、しかも体への侵襲が少ないので日本でも最近は多くの方が放射線による治療を受けられています。前立腺癌の細胞は血液中の男性ホルモンの刺激により増殖します。男性ホルモンの分泌を抑えて前立腺癌の発育をとめる治療をホルモン療法といいます。男性ホルモンの大部分は精巣から分泌されるので、精巣を摘出するか、精巣からのホルモンの分泌を抑制する薬(LH−RHアナログ)を用いる方法で、ホルモン療法は行われています。ホルモン療法はほとんどの前立腺癌において有効ですが、その効果は永久ではなく、いつかはホルモン療法耐性の癌となります。ホルモン療法の有効な期間は、治療開始時の病巣の進展度や細胞の悪性度によって異なりますが、前立腺内に限局した癌で悪性度の低いものなら、10年以上有効なものも珍しくありません。転移を有する癌ではホルモン療法もその有効期間は短く、2年程度とされています。ホルモン療法が無効となった前立腺癌にはいい治療法はなく、その予後はきびしいものがあります。治療の選択にあたっては、病期8のものに対しては手術や放射線療法で根治を目指し、病期cに関しては放射線療法やホルモン療法を行い、病期Dではホルモン療法を行うのが一般的です。しかし、前立腺癌が高齢者の疾患であり、その発育が址較的ゆっくりであることなどから、治療法の選択に際しては、患者の年齢、合併症、希望等を考慮して決定すべきものと考えられています。

 

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