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耳鼻咽喉科

目次

 

 

幼小児の難聴について

 

 難聴は、音を聞いたり、音を区別したりする能力が低下している状態です。中耳や内耳の障害で、脳の障害ではありません。難聴は生まれつきの障害の中でも、最もよく見られる障害の一つです。毎年1,000人に1〜2人の難聴をもった子どもが生まれます。生まれた時からある難聴は“先天性難聴”と呼ばれています。難聴は青少年や大人になってから進行することもあります。
 
 新生児は、生後1ヶ月以内、できたら出生後の退院前に聴覚のスクリーニング検査を受けることがすすめられています。これは、言語やコミュニケーションの能力は、生後2〜3年のうちに急速に発達するため、難聴の発見が遅れると、これらの能力の発達も遅れてしまうためです。新生児聴覚スクリーニングを受けない場合、2〜3歳になるまで診断されないことが多いのです。早期のスクリーニング・診断・治療の目標は、難聴をお持ちのお子さんの言語や学習能力の発達のお手伝いをすることです。

 

 

幼小児の難聴の原因について

 難聴には、遺伝によるものとそうでないものがあります。遺伝によらないものには、出産の時や、その前後の病気も含まれます。また、難聴の原因が分からないものもあります。難聴をもったお子さんの90%は、聴こえが正常なご両親から生まれます。

 

 遺伝的な要因は、子供の難聴の原因の1/3(高度の難聴の場合半分以上)であると考えられています。そして、専門家の間では、400個もの遺伝子の突然変異(突然の変化)が難聴の原因となっていると考えられています。難聴の遺伝的な原因は、以下の2つのグループに分けられます。

 

  1. 症候性のもの:難聴以外の障害も出現します。遺伝的な原因のもののうちの約30%を占めます。
  2. 症候性ではないもの:難聴のみが出現します。症候性でない難聴の30%がコネキシン26と呼ばれる    遺伝子の異変によって起こります。

 

幼小児難聴・言語障害クリニックにおける遺伝診療についてのページもご覧下さい)

 

1/3は、遺伝以外の原因によって起こります。それらには、妊娠中の以下のような病気が含まれます。

  • 風疹
  • サイトメガロウイルス感染
  • トキソプラズマ
  • ヘルペス感染
  • 梅毒

 

そのほか、

  • 早産(妊娠37週未満での出産)
  • 出生後の頭部外傷や、幼小児期の感染症(髄膜炎、麻疹、水痘)
  • ある種類の薬(ストレプトマイシンという抗生物質など)

 

が難聴の原因となることもあります。また、耳の感染(中耳炎)によっても一時的に難聴となることがあります。耳の感染を繰り返していて、きちんと治療されていないような場合、難聴となってしまう可能性があるので注意して下さい。

 

残りの1/3については難聴の原因がまだ分かっていません。

 

難聴のタイプについて

 

音が耳の外部(耳介)から入ってくると、外耳道を通って鼓膜に到達します。鼓膜に達すると鼓膜を振動させ、その振動は中耳の小さい骨(耳小骨)に伝わります。このように、外耳道→鼓膜→中耳と経由して、外からの音は内耳(蝸牛)に伝わります。内耳では、何千もの小さな毛を持った細胞が内耳からの振動を感じとり、それらを聴神経に伝えるための信号に変えます(AD変換)。その信号は、神経を伝わって脳にある聴こえの中枢へと送られます。
 

 

 

 

 

 

 難聴は、聴こえの障害がおこる部位によって、1)伝音難聴、2)感音難聴、3)混合性難聴、4)Auditory Neuropathyに分けられます。
 
1)伝音性難聴:音が外耳や中耳を伝わっていく途中で、何かが音を遮ることによって生じます。外耳道の途中の塞がり、鼓膜の傷、中耳に水が溜まっている場合(滲出性中耳炎)や中耳の感染(急性中耳炎)などが、伝音性難聴の原因となります。このタイプの難聴は、通常一時的なもので、薬を飲んだり、耳の中の水を抜いてあげたりするとよくなります。真珠腫性中耳炎では手術治療が必要な場合があります。
 
2)感音性難聴:内耳の細胞が振動を感じることができない場合や、信号を脳の聴こえの中枢へ伝えることができない場合に生じます。妊娠中の感染や遺伝的な要因はこのタイプの難聴を引き起こします。感音性難聴は通常一生続きます。補聴器で音を聞くことはできるようになりますが、ハンディを伴うことがあります。脳にある聴こえの中枢がダメージを受けた場合も感音性難聴が生じます。難聴の程度が軽度な場合には、そのまま経過を見るだけの場合もありますが、中等度以上の場合は、補聴器や人工内耳が必要になります。
 
3)混合性難聴:感音性難聴のあるお子さんが、伝音性難聴もあるときに起こります(中耳に水が溜まっている場合など)。急に起こった中耳炎の場合、難聴の予防には、早いうちの適切な治療が欠かせません。
 
4)Auditory Neuropathy:1996年にKagaとStarrのグループによって初の報告がされたもので、ABR無反応ですがDPOAEは正常な特別なタイプで、先天性と後天性の2つに分かれます。

 

 

幼小児の難聴を疑うサインについて

ご両親は、難聴のサインに常に注意して、お子さんのかかりつけの医師とよく相談して下さい。難聴のサインとしては以下のものがあります。 

  • 大きな音にびっくりしない
  • 生後3ヶ月を過ぎても呼びかけに反応しない
  • 生後6ヶ月を過ぎても音がする方へ向いたり、音の真似をしようとしたりしない
  • 生後12ヶ月の時点でまだおしゃべりをしない
  • 2歳までに単語をしゃべらない
  • 3歳になっても単語も2語文も話さない
  • 何かを表現をするときに言葉の代わりにジェスチャーを使う

 

より年長のお子さんでは、難聴のサインとして以下のようなものがあります。

  • 周りの子供より言葉の数が少ない
  • 理解しにくい言葉でしゃべったり、非常に大きい(またはか細い)声を出したりする
  • 何度も聞き返す
  • テレビの音を非常に大きくする
  • 学校でぼんやりしていたり、読み書きや計算が苦手だったりする

 

 

聴覚検査と難聴診断について

1. 幼小児の難聴を診断する検査法について

 

生後6ヶ月未満のお子さんの聴こえの検査としてよく行われているのは、聴性脳幹反応(ABR)です。この検査では睡眠中にヘッドフォンで音を聴かせます。コンピューターに接続されている電極を頭の上に置いて、音に反応して生じる脳幹の脳波を測定します。また、ABRに似た検査で、最近開発された周波数別の聴性定常反応(ASSR)という検査が行われることもあります。
 
生後3か月〜6ヶ月のお子さんには、聴性行動反応検査(BOA)を行います。この検査では、色々な種類の音を様々な音圧(音の圧力)でスピーカーを通して聞かせます。そして、どれくらいの音圧で、何らかの反応(振り向く、音源を捜す、目を動かす、ハッとなる、びっくりする、泣きだすなど)があるかを調べます。
 
生後6ヶ月〜3歳のお子さんには、条件詮索反応聴力検査(COR)を行います。この検査ではスピーカーから音を出します。はじめは人形と音を同時に出して色々な音に反応できるようになってもらい、きちんと反応できた場合、お子さんが喜ぶような人形が見られるようになっています。
 
3〜5歳のお子さんには、遊戯聴力検査を行います。この検査では、音が聞こえたら、おはじきをとるような簡単な遊び(動作)をしてもらいます。
 
幼児期以降のお子さんには純音聴力検査を行います。この検査では、音が聞こえたらボタンを押してもらいます。
 

 

これらの検査は、以下の人にも推奨されています。

  • 新生児期にスクリーニング検査を受けていないお子さん
  • 耳の長引く感染、髄膜炎、その他難聴を引き起こすような病気にかかったことのあるお子さん
  • 難聴を起こす可能性のある症候群と診断されているお子さん
  • ご両親から見て、音に対して普通に反応していないと思われるお子さん

 

 

2. 幼小児難聴・言語障害クリニックにおける難聴診断のながれ

 

 

新生児スクリーニングによって、難聴のお子さんを早期に発見して、大脳の可塑性の高い乳幼児期から聴能訓練を始めることは非常に重要です。最近では、自動化聴性脳幹反応(AABR)や耳音響反射(OAE)と言った簡便で適切な他覚的検査があります。 

 

  • AABRは、小さなイヤーフォンで音を聞かせ、コンピューターに接続されている電極を頭の上に置いて、音に反応して生じる脳波を測定する検査です。
  • OAEは、コンピューターに接続された小さなマイクロフォンを耳の中に入れ、音を耳に送って、その音に対する内耳の反応を記録する検査です。

  

他院でのスクリーニング含め、難聴が疑われた場合は、当院で以下のような年齢に応じた検査を行って、難聴の有無・程度を判断します。

 

なお、上記難聴検査以外にも、当クリニックでは一般的耳鼻咽喉科検査や遺伝子検索、血液検査(先天性サイトメガロウィルス感染など)、画像検査として奇形の診断などに、CT・MRIを実施しております。

 

 

難聴と診断された場合について

お子さんが難聴である場合、生後6ヶ月までに治療を開始するのが理想的です。難聴のお子さんに関するいくつかの研究では、このように早期から治療されたお子さんは、聴こえに特に問題のないお子さんと同じ程度のコミュニケーション能力を身につけることも可能であるとされています。

 

 

まず初めは、補聴器を両耳につけて聴こえと言葉の教育を受けます。補聴器は、音を増幅して、言葉を聞いて言語の能力を発達させるお手伝いをします。小さなお子さんには、お子さんの成長に合わせて調整がしやすい耳掛型の補聴器が推奨されています。
 
外耳または内耳の奇形、繰り返し起こる耳の感染などによって、伝音性難聴が一生続くと判断された場合、手術が推奨されます。中耳に水が溜まっている場合などは、一時的な軽度の難聴ですが、長引く両耳の感染の場合、お子さんの言葉の発達が遅れてしまう可能性があります。場合によっては、鼓膜にチューブを置いて、中の水を排出してあげた方がよいと言われるかもしれません。この治療は、入院する必要はありません。
 

 

重度の感音性難聴のお子さんでは、手術も一つの選択肢となるかもしれません。2歳以降のお子さんには、聴こえの刺激するために、人工内耳と呼ばれる器械を手術で内耳に入れることも可能です。手術は入院を必要とします。詳しくは、人工内耳と人工内耳手術についてのページをご覧下さい。

 

 

幼小児難聴・言語障害クリニックにおける聴能訓練について

 

難聴の程度や難聴になった年齢によっては、耳で聞く訓練を受けなくてはいけません。小児の聴覚障害は、ことばや音を知覚し認識する能力(聴能といいます)や言語の発達を遅らせ、ときに心因反応やコミュニケーション障害をもたらすことがあります。
この聴能は、学習によって開発されることから、先天性難聴の場合は、頭脳のやわらかい幼いうちに開始されることが望まれています。高度難聴の場合、生後6ヶ月頃までに補聴器をつけ、少なくとも1歳6ヶ月頃までに適切な言語指導が開始されることが理想です。
 

当クリニックでは、難聴診断後、言語指導ができる施設と連携し、補聴や聴覚訓練の指導をすることができます。また、ことばの発育が遅れていると感じていましたら、年齢を問わずご相談ください。ことばの発育の程度を適切に評価します。

 

 

人工内耳と人工内耳手術について

1. 人工内耳について

 

人工内耳は、機能しなくなって聞こえなくなってしまった蝸牛(内耳)に電極を挿入して、入ってくる音を電気信号に変えて神経に送り、「音」を聞くものです。内耳が原因の難聴で、補聴器を使用しても十分に聞こえず、話しことばが発達しない場合で、中耳の問題や自閉症、精神発達遅滞など他の原因によるものでなければ、人工内耳の適応があります。当科では、適切に人工内耳の適応を決定し、人工内耳の手術を致します。また、人工内耳は手術の後、聴覚訓練が必要です。当科では、人工内耳手術後の指導を教育施設と連携しながら行っております。人工内耳に対しての質問も受け付けます。ご連絡ください。

 

 

2. 人工内耳の適応と手術について

平成18年も小児人工内耳の適応基準が見直されています。適応年齢は16ヶ月以上、難聴レベルは、種々の聴力検査を用いても両耳とも平均聴力レベルが90dB以上である場合とされています。この2つの条件が合っても、すぐに人工内耳の適応とはなりません。少なくとも6ヶ月以上にわたる最適な補聴と療育によっても両耳とも平均補聴レベルが話声レベルを超えず、補聴器のみでは音声言語の獲得が不十分と予想される場合に適応となります。しかし、髄膜炎によって難聴が生じた場合は、これらの条件と関係なく手術となる場合があります。手術の後の療育や家族の支援は非常に大切ですので、ご心配の方はご相談ください。手術は、全身麻酔で耳の後ろを切開した後、内耳(蝸牛)にアプローチして人工内耳を埋め込みます。入院期間は23週間ほどです。人工内耳の手術は平成64月より健康保険の適応となっています。さらに各種の医療費助成制度が適応されると大幅に負担が少なくなります。

 

 

幼小児難聴・言語障害クリニックにおける遺伝診療について

幼小児の難聴と遺伝には密接な関係があります。生まれた時から高度難聴の子は500人から1,000人に1人と言われていますが、その半分以上に遺伝が関わっているのです。遺伝というと家族や親類に他にも何人か難聴者がいることを思い浮かべる方が多いと思いますが、実際には難聴の見つかった子ども以外に難聴者がいない場合がとても多いのです。これは父親と母親の遺伝子の偶然の組み合わせで、その子どもが難聴になることが多いためです。最近の医学の進歩で、難聴の子どものごく少量の血液を調べることで遺伝的原因がわかる場合が増えてきました。そして遺伝的原因を知ることで、難聴の進み方や程度の予測、さらに悪化しないための注意点、人工内耳の効果の参考、そして次の出産のための遺伝相談に役立てるなど、貴重な医療情報を得られる場合が増えてきました。私どもはこれまでに当院臨床研究(感覚器)センター聴覚障害研究室において500人ほどの難聴の方々で遺伝子検査を行い、難聴の遺伝診療に役立ててきました。当クリニックにおいても難聴の子どもに役立っていきたいと考えています。

 

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